アブシジン











































































































アブシジン酸
一般情報
IUPAC名
別名
分子式 C15H20O4
分子量 264.32 g/mol
組成式
式量 g/mol
形状 無色固体
CAS登録番号 [21293-29-8]
SMILES
性質
密度と相 g/cm3,
相対蒸気密度 (空気 = 1)
水への溶解度
への溶解度
への溶解度
融点 161–163 ℃(120 ℃ で昇華)
沸点
昇華点
pKa
pKb
旋光度 [α]D +411.1 (c = 1、エタノール、20 ℃)
粘度
屈折率
出典

アブシジン酸(—さん)は植物ホルモンの一種。構造的にはセスキテルペンに属する。休眠や生長抑制、気孔の閉鎖などを誘導する。また乾燥などのストレスに対応して合成されることから「ストレスホルモン」とも呼ばれる。分子式C15H20O4。略称 ABA。CAS登録番号は [21293-29-8]。


1961年に Liu と Carns がワタの葉柄由来の落葉促進物質を Abscission(葉などの離脱)にちなみ「アブシジン (Abscisin)」と命名した。1963年には大熊和彦らがワタ未熟果実から同様の物質を単離し「アブシジンII (Abscisin II)」と命名した。また1965年には J. W. Cornforth らがカエデ葉から冬芽休眠を誘導する物質を単離し「ドルミン(Dormin)」(休眠 Dormancy にちなむ)と命名した。構造解析の結果これらは同一物質であることが判明し、「アブシジン酸 (Abscisic acid)」と命名された。

植物体内での合成、分布

植物でのアブシジン酸合成は、ピルビン酸とグルタルアルデヒド3-リン酸からカロテノイドを介して合成される経路がメインであると考えられている。合成経路の前半は色素体、後半は細胞質内での反応である。

アブシジン酸は植物体内どこでも合成されうるが、隣接する場所だけでなく離れた場所にも輸送される(例えば葉と根の間での輸送など)。環境ストレス(乾燥や塩などによる水(浸透圧)ストレスや、栄養が不十分な場合、その他ダメージを受けた場合など)に応答して合成が促進される。また、種子の発達過程において種子中に蓄積され、種子の成熟、休眠を促進する。

なお、アブシジン酸の合成に欠陥を持つ突然変異体では、乾燥耐性の低下、種子休眠の低下(例えば穂発芽)などの現象が見られる。

効果

一般には環境ストレスに応答して、あるいは季節などに応じて、ストレス体制の強化や細胞増殖および生長の抑制などにより、環境に対する適応を促す。代謝を低下させたりストレスに応じて変化させたり、また他のホルモンの働きに影響を与える(サイトカイニンの取り込み抑制、ジベレリンやエチレンのレベル維持など)。

結果的に、以下のように様々な効果を表す。芽や種子の休眠を誘導する(発芽を阻害する)。種子の発達を促進する。気孔の閉鎖を促進したり、適合溶質やLEAタンパクなどの蓄積を誘導することで、乾燥に対する耐性を向上させる。根(主に側根)の伸長を抑制する。ダメージを受けた付近の細胞の老化を促進し個体が生き残れるようにする。落葉や落果(器官離脱)を促進する場合もあるが、この効果は必ずしも顕著ではない。 なお、今ではアブシジン酸による器官離脱と老化の誘導はエチレンを介した二次的な作用である可能性が高いと言われている。

各種植物における分布

アブシジン酸は高等植物のほかにコケ、緑藻、また藍藻と一部の植物病原菌からも見出されており、コケと緑藻では生長抑制作用が明らかにされている。また苔類(コケ)に多量に含まれるルヌラリン酸(Lunularic acid、構造がアブシジン酸にやや似る)についても類似作用が示されている。