カルビン


カルビン - ベンソン回路と炭酸同化の概略


カルビン - ベンソン回路(- かいろ)とは、光合成反応における炭酸固定反応の代表的なものであり、緑色植物をはじめ、ほとんどの光合成生物(一部の例外を除いて光合成細菌も同様)がこの回路を所持している。光化学反応により生じたNADPHおよびATPが駆動力となって回路が回転し、最終的にフルクトース6-リン酸から糖新生経路に入り、多糖(デンプン)となる。


なお、この回路の中核である炭酸固定反応を担うリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ (RubisCO) はこの世でもっとも存在量の多い酵素であると言われている。いくつかの酵素(RubisCOも含む)が光によって活性化されるために、夜間は炭酸固定活性が低下する


別名、暗反応(最近ではあまり使われない)、カルビン回路、カルビンサイクル等。




目次

  • 1 カルビン - ベンソン回路の反応
    • 1.1 炭酸固定反応系
    • 1.2 多糖変換系
  • 2 カルビン - ベンソン回路の調節
  • 3 関連項目

カルビン - ベンソン回路の反応

カルビン-ベンソン回路はチラコイド膜外部即ち葉緑体基質で起こっている。また光合成細菌の場合は細胞質基質で行なわれる。これらの反応はその回転に13種類の酵素の関与する複雑な回路であり、

  • 多糖に変換される系
  • 再び炭酸固定反応に使用される系

が共存している。これらの系は共同的に動いている。炭酸固定反応の主格を担う糖は『D-リブロース1,5-ビスリン酸』である。

カルビン-ベンソン回路の多糖変換系収支式は以下の通りである。

  • 6CO2 + 12NADPH + 18ATP → C6H12O6 + 12NADP+ + 18ADP + 18Pi

この反応を正確に書くと

  • 6CO2 + 12NADPH + 18ATP → フルクトース1,6-ビスリン酸 + 12NADP+ + 18ADP + 16Pi

これらの式から判るが、二酸化炭素が6分子カルビン-ベンソン回路で固定されると(つまり炭酸固定反応に再使用される系が6回転すると)糖新生系に組み込まれるのに十分な炭素が供給される。

炭酸固定反応系

カルビン-ベンソン回路による炭素固定反応には糖の循環が必要である。上記にも筆記したがこの炭酸固定反応系は以下の反応からなる。糖の炭素数を特記しておく。

  1. D-リブロース1,5-ビスリン酸 (RuBP, C5) + CO2 → 2分子の3-ホスホグリセリン酸 (C3×2)
  2. 3-ホスホグリセリン酸 (C3) + ATP → 1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + ADP
  3. 1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + NADPH → グリセルアルデヒド3-リン酸 (C3) + NADP+ + Pi

このグリセルアルデヒド3-リン酸を起点にして、4つの反応がカルビン-ベンソン回路には存在する。その4つの反応はそれぞれ以下の通りである。

  1. グリセルアルデヒド3-リン酸 (C3) + セドヘプツロース7-リン酸 (C7) → リボース5-リン酸 (C5) + キシルロース5-リン酸 (C5)
  2. グリセルアルデヒド3-リン酸 (C3) → ジヒドロキシアセトンリン酸 (C3)
  3. グリセルアルデヒド3-リン酸 (C3) + ジヒドロキシアセトンリン酸 (C3) → フルクトース1,6-ビスリン酸 (C6)
  4. グリセルアルデヒド3-リン酸 (C3) + フルクトース6-リン酸 (C6) → エリトロース6-リン酸 (C4) + キシルロース5-リン酸 (C5)

うち、2.の反応は葉緑体外部へ輸送されるジヒドロキシアセトンリン酸を合成する反応であり、輸送には3回転を要することが判る。また、3.はそのまま多糖変換系に続く反応であるが、6回転分の炭素固定数に足りなければ、4.の反応へフルクトースが使用される。

ジヒドロキシアセトンリン酸もそれを起点にいくつかの反応が起きるが、それらは

  1. 葉緑体外部への輸送
  2. フルクトース1,6ビスリン酸合成反応(3.の反応)
  3. ジヒドロキシアセトンリン酸 (C3) + 4.由来のエリトロース6-リン酸 (C4) → セドヘプツロース1,7-ビスリン酸 (C7)

である。上記の反応から合成されたセドヘプツロース1,7-ビスリン酸は

  • セドヘプツロース1,7-ビスリン酸 (C7) → セドヘプツロース7-ビスリン酸 (C7) + Pi

と言う反応に組み込まれ、セドヘプツロース7-リン酸はグリセルアルデヒド3-リン酸の反応1.に組み込まれる。グリセルアルデヒド3-リン酸の1.の反応により合成されるリボース5-リン酸およびキシルロース5-リン酸はそれぞれリブロース5-リン酸に変換される。

  • リボース5-リン酸 (C5) → リブロース5-リン酸 (C5)
  • キシルロース5-リン酸 (C5) → リブロース5-リン酸 (C5)

リブロース5-リン酸は以下の反応により再び、炭酸固定反応に組み込まれる。

  • リブロース5-リン酸 (C5) + ATP → リブロース1,5-ビスリン酸 (C5) + ADP

なお、上記の12反応に使用される酵素は上から順番に以下の通りである。

  • リブロースビスリン酸カルボキシラーゼ (RubisCO)
  • ホスホグリセレートキナーゼ
  • グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ
  • グリセルアルデヒド3-リン酸:セドヘプツロース7-リン酸トランスケトラーゼ
  • トリオースリン酸イソメラーゼ
  • グリセルアルデヒド3-リン酸:ジヒドロキシアセトンリン酸アルドラーゼ
  • グリセルアルデヒド3-リン酸フルクトース6-リン酸トランスケトラーゼ
  • ジヒドロキシアセトンリン酸:エリトロース4-リン酸アルドラーゼ
  • セドヘプツロースビスホスファターゼ
  • リボース5-リン酸イソメラーゼ
  • キシルロース5-リン酸エピメラーゼ
  • 5-ホスホリブロキナーゼ

多糖変換系

カルビン-ベンソン回路の多糖変換系は最後にはデンプンになるために回路から炭素の出て行く系の一つである。他にジヒドロキシアセトンリン酸の葉緑体外部への輸送系も存在する。多糖変換系は以下の反応からなる。判りやすいように全体の炭素数をC: Xと表記する。

  1. D-リブロース1,5-ビスリン酸×6 (C: 30) + 6CO2 → 3-ホスホグリセリン酸×12 (C: 36)
  2. 3-ホスホグリセリン酸×12 + 12ATP → 1,3-ビスホスホグリセリン酸×12 (C: 36) + 12ADP
  3. 1,3-ビスホスホグリセリン酸×12 + 12NADPH → グリセルアルデヒド3-リン酸×12 (C: 36) + 12NADP+ + 12Pi
  4. グリセルアルデヒド3-リン酸×6 → ジヒドロキシアセトンリン酸×6 (C: 18)
  5. グリセルアルデヒド3-リン酸×6 (C: 18)+ ジヒドロキシアセトンリン酸×6 (C: 18) → フルクトース1,6-ビスリン酸×6 (C: 36)
  6. フルクトース1,6-ビスリン酸×6 → フルクトース6-リン酸×6(C: 30は1.へ、C: 6だけ糖新生系へ)

6.の反応以外は全て、上記の炭酸固定反応系に出てきている。6.の反応を起こしている酵素は

  • フルクトースビスホスファターゼ

である。このフルクトースビスホスファターゼを加えた13の酵素がカルビン-ベンソン回路の全反応を担っている。

カルビン - ベンソン回路の調節

カルビン-ベンソン回路は暗反応であり、NADPHおよびATPの供給さえあれば暗所でも植物は二酸化炭素を固定できるはずだが、実際は炭酸固定反応は起こらない。これは、RubisCOをはじめとするいくつかの酵素が光照射によって活性化を受けるからである。それらの酵素と活性化システムについては以下の通りである。

  • RubisCO
  • フルクトースビスフォスファターゼ
  • セドヘプツロースビスホスファターゼ
  • 5-ホスホリブロキナーゼ

中でも、もっとも光活性化の研究が進んでいるのがRubisCOであり、以下の要素によって活性化する。

  • Mg2+の添加
  • pHを微アルカリ側に置く
  • 炭酸イオンを加える(ホモトロピック効果)
  • 葉緑体内の阻害剤2-カルボキシアラビニトール1-リン酸を除いてやる
  • ATP要求性RubisCO活性化酵素の触媒を受ける etc.

RubisCO以外の3酵素については、光化学反応のCFo-CF1ATP合成酵素にも見られるチオレドキシンによる-SH基への還元と同じシステムが働いている。

関連項目

  • 光合成
  • 光化学反応
  • 炭素固定
  • RubisCO
  • 光呼吸