代わりの生化


代わりの生化学(かわりのせいかがく)では、炭素や水によらない生化学について解説する。


宇宙生物学の見地から、現在知られているタンパク質や脂質、糖質、核酸などの有機化学に基づくシステム以外の生化学によるシステムの理論や仮説がごく一部で研究されている。しかし、2006年現時点では、炭素を基盤としない生命は発見されていない。




目次

  • 1 ケイ素による生化学
  • 2 窒素とリンによる生化学
  • 3 その他の生化学元素候補
  • 4 水以外の溶媒
    • 4.1 アンモニア
    • 4.2 他の溶媒
  • 5 関連項目

ケイ素による生化学

最もよく提唱されるのが、炭素と多くの化学的性質が似ており、同じ元素の族に属するケイ素原子である。しかし、ケイ素原子はより大質量で、原子半径も大きいため、生化学に重要な二重三重の共有結合が難しくなる。また、二酸化炭素に近い二酸化ケイ素が、水が液体となる温度では水に溶けない固体の物質であることも、ケイ素を生化学の要素とすることを難しくする。(珪素生物を参照)

窒素とリンによる生化学

窒素とリンもまた、生化学の基礎となる可能性を持つ。リンは炭素のように長い連なる分子をそれ自身で構成でき、潜在的に複雑な高分子も形作れるものの、かなり反応しやすい。しかし、窒素と結合することで、はるかに安定した共有結合の構造となることができる。

二酸化窒素の大気の中では、リンと窒素 (P-N) を基盤とした植物のような生物は、大気から二酸化窒素を、地面からリンを吸収できる。二酸化窒素は砂糖のような物質が生産される過程で減少し、大気には酸素が放出される。同じくリンと窒素を基盤にした動物はその植物を食べ、大気中の酸素を使い砂糖のような物質を代謝、二酸化窒素を吐き、リンを排出する。アンモニアの大気の中では、P-N植物は大気からアンモニアを、地面からリンを吸収し、アンモニアを酸化させて砂糖のような物質を生産し、水素を放出すると考えられる。P-N動物は、水素を吸って、砂糖をアンモニアとリンに戻すだろう。これら窒素の世界でも酸化と還元は逆の組み合わせとなり、地球で知られている生化学の代わりを務めるだろう。

リン-窒素のサイクルではエネルギーが不十分ではないか、という見方からいくつかの議論が続いている。また、窒素やリンは宇宙の中で必要な量・比率が見つけられそうも無い。炭素は恒星の核融合の過程で先に形成されるため、大量に存在する。

その他の生化学元素候補

塩素は、炭素やそれ以外を基盤とする生物の、酸素の代替物としてしばしば提案される。しかし、塩素は宇宙の中で酸素ほど豊富ではなく、惑星がその表面に生化学的な基礎とするほど十分大量の塩素を持つということはありそうもないだろう。塩素はその代わりに、ほとんどが塩などの化合物となるだろう。

硫黄もまた、長い連なる分子を構成できるが、リンと同じく高い反応性が欠点となる。地球の一部の場所では硫黄を消費するバクテリアが発見されており、これらのバクテリアは酸素の変わりに硫黄を利用し、硫黄から硫化水素に減少させる。この例としては緑色硫黄細菌や紅色硫黄細菌が挙げられる。

水以外の溶媒

炭素化合物に加えて、全ての現在知られている地球上の生命は、溶媒として水もまた必要とする。しばしば、水はこの役割を果たす唯一の安定した化学物質だと考えられる。水の特性には、液体である温度の幅が広いことや、温度調節に役立つ高い熱の許容量、蒸発時の大きな熱量、様々な化合物を溶かす能力など、生命の過程にとって重要な要素を含んでいる。他の化学物質にも同じような特性を持つものがあり、しばしば水に代わる物質として提案される。

アンモニア

アンモニアはおそらく代替物質として提案されたもののうち、最も一般的なものである。多数の化学反応はアンモニア溶液でも可能であり、液体アンモニアはいくつか水と同じような化学性質を持っている。アンモニアは、ほとんどの有機分子を水と同じように溶かすことができ、さらに多くの金属元素も溶かすことができる。これらの化学特性から、アンモニアを基盤とする生命は可能かもしれないという理論が存在している。しかしながら、アンモニアは生命の基礎としていくつかの問題も持っている。アンモニアの気化熱は水の半分で、表面張力は1/3ほどである。これはアンモニア分子間の水素結合が水より遥かに弱いことを意味している。

アンモニアを元とする生物圏は、おそらく地球上の生命からすれば極めて珍しい温度や気圧で存在しているだろう。地球上の普通の生命は、1気圧で0℃(273K)~100℃(373K)という水の融点と沸点の間に存在している。アンモニアの融点と沸点は-78℃(195K)~-33℃(240K)である。そのような非常に冷たい環境では、化学反応は非常に遅くなる。

他の溶媒

他に溶媒として提案されたものには、メタノール、六フッ化ウラン、硫化水素、塩化水素がある。後の二つは、宇宙に硫黄と塩素が比較的少ないことが問題となる。炭化水素、例えばタイタン表面に存在すると言われるメタンやエタンの海は、広い範囲の温度で溶媒として機能できるが、極性に欠けている。

関連項目

  • 宇宙生物学