遠心分離(え


遠心分離(えんしんぶんり、centrifugation)とは、遠心機を使ってサンプルに遠心力をかけることにより、液体、固体あるいは気体を分離する方法である。


懸濁液や乳液などはろ過や抽出操作では分離することが困難であるが、遠心分離では強大な加速度が加わるために、密度差がわずかであっても遠心力がそれぞれの分散質を異なる相に分離するようにはたらき、通常では分離困難なサンプルに対しても有効にはたらく場合も多い。




目次

  • 1 密度勾配遠心法
  • 2 遠心機
    • 2.1 工業用遠心機
    • 2.2 ガス遠心分離装置
    • 2.3 遠心エバポレーター

密度勾配遠心法

生化学では塩化セシウムなど式量の大きい塩の溶液中を超遠心機(後述)に施して、高分子化合物を分離する密度勾配遠心法(みつどこうばいえんしんほう)が利用される。これは溶液を長時間、超遠心機に施すと沈降とブラウン運動が釣り合う沈降平衡が生じ、これが液面から底に向かって連続的変化する。それゆえ、特定の密度の粒子や、タンパク質の分子量に応じて層を成して分離する現象が見られ、この原理を利用して高分子の分離や平均分子量を推測することができる。

遠心機

遠心分離に使用される装置を遠心機(えんしんき、centrifuge)と呼ぶ。筐体とその内部の回転子とで形成される。手回し式のギアで回転させるものから、高速電動モーターで回転させるものまでさまざまである。

遠心機の能力は発生する遠心力をG(重力加速度)で計測した値で示され、数千Gまでかけられるものを遠心機、数万G以上をかれられるものを超遠心機と呼び区別している。

回転子は用途によりさまざまな形状が存在する。サンプル容器は沈殿管(ちんでんかん)と呼ばれ試験管、スピッツ管、ディープウエルプレートなどが使用されるため、通常はアダプターを取り替えることで、種々の容器に対応できるようになっているものが多い。

いずれも、回転速度により遠心力ベクトルが変化するのに、管の向きを鉛直に保てるように振り子式の支点でアダプターを回転子に保持させるようになっている。また、回転子の重量配分に偏りがあると高速回転時に振動を発生し危険でもあるので、サンプルは重量配分に偏りが無いようにセットされる。

超遠心機では、種々の部位による摩擦による発熱が無視できないので、生化学用の超遠心機にはサンプルを冷却する仕組みが備えられたものもあり、これらは冷却遠心機と呼ばれる。場合によっては減圧にすることで、空気との摩擦を減らす冷却遠心機も存在する。

工業用遠心機

工業用では砂糖の精製や、乳脂肪分を分離するために遠心機が利用されている。また化学工業用には結晶とろ液を分離する為の布張りの遠心機が利用されることもある。

ガス遠心分離装置

六フッ化ウランガスを超遠心機にかけると、原子量の違いにより同位体濃度に勾配が発生する。遠心機の原理で同位体を分離する装置をガス遠心分離装置と呼ぶ。天然ウランから濃縮ウランを製造するウラン濃縮を行う濃縮工場で使用されている。

超遠心機の発生する数十万Gであっても同位体の濃度勾配はわずかなものである為、高濃度側と低濃度側のガスをそれぞれ別の遠心分離装置に導く。ガスを連続的に多数の遠心分離装置へ多段階にかけることで同位体を高度に濃縮することが出来る。

遠心エバポレーター

遠心機を減圧にすると、強大な遠心力が溶液の突沸を押さえ込むため、試験管やディープウエルプレートなど微少量の溶液サンプルを小容量の容器のまま蒸発・乾固させることが出来る。このような目的で設計された遠心機を遠心エバポレーターと呼ぶ。

回転子の仕組みと超遠心機と同様であるが、筐体が減圧可能になっており、サンプル容器を赤外線輻射などで加温することが可能なようになっている。

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